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| 土俵作りの日。夏場所めざしての作業だが、ポカポカ陽気に作り手のお相撲さんはノンビリやってる。 元大関魁傑が創設した新しい気鋭の部屋。大物幕内の大ノ国を擁して飛躍の季節。朝早く玄関の戸を開けて入ったら、お相撲さんたちは、まだ安眠中でして・・・。 解説
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| 土俵の作り方イラスト|1|2|3| | ||||||||||||||
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| 土俵がまるでないよ!! 朝6時15分、私にとっては早い朝だが、国電の中はもうだいぶつまっていた。ほぼ80%の席が埋まっ ていた。やはり春だ。太陽の位置ももう屋根の高さの2倍はある。 桜は、盛りを過ぎ三分ほど葉になっ ている。 それでも、国電の窓から見える東中野の菜の花は今真っ盛り。見事な黄緑の帯を作っている。 国電阿佐ヶ谷駅をおりて、朝の出勤の人々と、反対の道を歩いて行く。地図は頭の中にあるが、方角 だけ。私は地図の道を信用していない。 なんとわかりにくい道だろう。クネクネ道をなんとかたどりついた。 放駒部屋、親方は元大関魁傑。部屋が建ってまだ3年目。幕内力士大ノ国(189センチ、156キロ)を 擁する新進気鋭の部屋だ。 玄関のトビラを引いておどろいた。 けいこも何もやってないのだ。しかも、土俵はまるで無い!!土はデコボコ、グッチャングッチャン になっていて、相撲どころではない。 尚驚いたことに、馬の大きなつい立ての向こうは上がり座敷。そこに若いお相撲さんたちが数人、ナ ント寝ているのだ。 当初この日はけいこを見させてもらうという連絡をしてきたものだから、めんく らった。「あっゴメン。きょうけいこやってないの」 安眠を妨害された5人の若者はいっせいに私を見た。ふとんから首を出してまるでカメみたいだ。 きくと7時半まで寝るということだ。私は少々気落ちした心をとりもどすために、とにかく上がり込むこ とにした。 大きい体の彼らにはふとんが小さいのか朝の光がまぶしいのかふとんをずり上げずり上げ、 そのたんびに、太い足がニョキと出てしまう。 その光景を見てて、私は今日1時間しか寝てないことに気が付いた。そしてすぐに彼らの横にゴロリと ころがった。しばしオヤスミ。 大ノ国関が現れてきた 背の高い駒青海(190センチ、120キロ)序二段、めがねをかけた安芸駒(189センチ、120キロ) 序二段、やさしい目をしたおすもうさん駒緑(175センチ、110キロ)序の口、はいって2ヶ月目で、 まだ相撲教習所へも行ってないという鈴村くん(184センチ、125キロ)らと話す。 三々五々顔を洗ったり、歯をみがいたり。 「今から土俵を作りはじめて、夕方までかかりますヨ」と彼らの一人。 本場所の土俵はなんと3日もかかるということも教えてくれた。 8時、自転車に乗って康夫さん(花籠部屋の呼出し)が来た。服を着がえ、地下タビにはき替え、見て る間に「カキ」土をならす木の道具を作った。 「グランドでいう『ナラシ』だね」 と彼がいった。 8時54分。アラキダという粘土質の黒っぽい土にカキがはいる。 微に入り細に入りていねいだ。だんだん土の荒いのがほぐされ細かいこなになっていく。 外ではノンビリ土俵のたわらの中に土を入れる作業が続いている。 ポカポカ陽気に、働く手もノーンビリ。ひねもすのたりのたりかな。手より口の方が働いている。 9時8分、ホースで水がまかれる。ほこりが立つので窓が開けられた。 外の土をこねる者たちの明るい声がパーッと部屋の中へはいってきた。いつものけいこ場の空気とは、 まるで違うそれだ。 康夫さんの土をならす音がそれにかぶさる。 サッサッサッと鉄の音。ザーッザーッザーとカキの木の音。 おもしろいのはタコといういわゆる、エンヤコーラの整地具だ。もちつきの音とまるで似ている。 かけごえも楽しい。「オイショ。オイッ」ペタン。 「オイショ。オイッ」ペタン。 大男4人がつく土のモチは見る間に固く平らになっていく。 先導役の三段目の彼が、時々吟味する。 「曲がってるじゃねえか!!」 康夫さんもそうだが、指揮する方はなかなかひとことひとことに声にしぶみがあって、ウームと うなってしまう。 9時29分、上から関取がおりてきた。弱冠20歳、大物大ノ国だ。 「来場所ねえ、番付なんてどうなるかわかんないスヨ。春場所は8の7で、まだ1場所しか幕内をやっ てないからね」 本当にわからなそうなのがいいね。ファンになってしまった。 やっぱり魁傑黒ズキン 話していると親方がヌッと現れた。 テレビや写真で見る人の良さそうなそれとは大違い。 魁傑黒ズキンという感じだ。がんじょうそうな体に黒いハダ。ああこれがあの大関返り咲き をなしとげた、不屈の精神の持ち主だなと実感するのに、そんなに時間はかからなかった。 そこそこにあいさつをして、こっちは目をふせてしまった。 親方が去ったあと、大ノ国関に、 たずねた。「あの色の黒いのはひやけ、それとも?」 大ノ国関が本当に子供のように大きな体をすくめていった。 「しーっ!!」実に小さな声だったけど、二人ともいっしょに 首をくっと曲げて、周りを見まわした。 奥から魚の塩焼きのにおいがする。腹がすいて来た。 「ヤッサン(康夫さん)メシいつにするか」 親方のでかい声が飛ぶ。 「エヘッ。ま、いつでもいいですよ。12時ですね」 今日から4日間巡業というあわただしい親方。てきぱきと指示している。若くてたのもしい 親分のようだった。 地方選挙の宣伝カーの声が遠くから風に乗って来た。「お願いしまーす」 「ありがとうございまーす。ありがとうございまーす」 町は今、春。 |
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| この種の貴重な写真は もちろん私の写真です。 自分のイラスト資料にする ために撮っていました。編 集者から、写真を提出する ように言われました。 何も考えずに、そのまま良 心的に渡したのでしょうね。 この日同じ日に撮った物、 他(間垣部屋) きっちり使われていました。 1985年の4月号117~119頁。 私のクレジット(撮影者の 名前)なかったですね。 20年前の事ですが荒い作り をしていまっす。 あっ、これは読売新聞の 「読売大相撲」です。 2003.3.11記 |
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| copyright 1982(2003) (c)Masahiko Ikeda Allrights reserved |
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